隠れ変数は、なーんだ?

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/0950.html
どこかで見たような国々が並んでいるよ...。



社会実情データ図録に『日本のODA供与先上位10位の変遷』というデータが追加された。2000年〜2003年の上位ランキングは以下の通りである。(数字は年平均供与額)

  • 1位:インドネシア (8億7800万ドル)
  • 2位:中国 (7億6100万ドル)
  • 3位:ベトナム (5億6100万ドル)
  • 4位:インド (4億2900万ドル)


実は、この国々、日本の冷凍シュリンプ/プローンの輸入金額上位ランキングにもランクインしている国々なのである。2005年1月〜3月上位ランキングは以下の通りである。(数字は3ヶ月累計。日本輸入通関統計による。)

  • 1位:インドネシア (106億8901万円)
  • 2位:ベトナム (86億8884万円)
  • 3位:インド (45億7374万円)
  • 4位:中国 (31億2774万円)


これは、決して偶然ではない。ODAによって資金や技術を提供することで、エビたちが養殖されているのだから当たり前の結果である。

税金を払ってODAによる資金などを提供をしてるからこそ、私たちはエビをあんなに安い価格で食べられるのである。

な・の・に、どっかの国は、

に対し、価格が不当に安いなどと言って、反ダンピング課税なんぞをしておる。価格が安いのは、もう一度書くが、価格に転嫁されていない、日本人の税金による投資があってこそなのである。だから、「不当」とか言われても困る。価格に転嫁されていない、というのが問題と言われれば、それもあるかもしれないが、そういうステークホルダー的議論はここでは差し控えておく。



ダンピング課税により見込まれた影響といえば、以下の3点などであろう。

  • どっかの国の国内エビ産業が守られる。
  • どっかの国が課税によって儲かる。
  • 一方、輸出国は儲からないから、円借款で貸し付けた分を返してもらえなくなる。(注:日本のODAは他国とは異なり、グラント(贈与)だけではなく、ローン(円借款)が半分ぐらい占めている。ローンは、財政投融資からのお金なので、返してもらえないと、郵貯が困ってしまう。詳しくは、アジア太平洋資料センターのページを参照のこと。)

結局、日本にとっては、反ダンピング課税を課された国のエビ価格が下がること以外に良いことはないわけだが、エビの価格は現状でもそれなりに安いので、これ以上下がったところであまりメリットはないように思われる。それよりは円借款のほうが心配だ。

一方、どっかの国の反ダンピング課税の影響には(予想されうる)誤算も生じていた。
2005年1月19日の水産経済新聞によれば、

  • 2004年の米国のエビの輸入量が、史上最高だった2003年をも上回りそうな様相を呈してきた。11月単月では前年の23.4%増となり、前月からは21.2%増やしている。11ヵ月間の累計で前年比1%増と鼻一つ抜け出し、記録達成は12月次第になってきた。反ダンピング課税は消費増、輸入増という米国のエビ市場のダイナミックを変えることはできなかったということになりそうだ。
  • もちろん、課税対象6ヵ国からの輸入量はエクアドルを除き軒並み減っている。累計で前年比中国23%、ベトナム36%、ブラジル58%、インド36%、タイ国5%ずつ減らし、エクアドルのみ8%増やしている。これら主要供給国からの輸入減を他の国が埋め合わせたことになる。上位10ヵ国からの比率減は、供給国がより多様化したことを示し、当然、対象6ヵ国の比率は激減している。
  • こういった事態は反ダンピング提訴が正式になった時点でまさに予想されていたことで、世界の百ヵ国を超える国でエビの生産が増えている時代に、6ヵ国からの輸入を制限しても、単にそれ以外の国々を刺激するだけであり、第三国を経由して入ってくるのも当然の帰結と考えられていた(インドネシアの急増が好例)。この調子では2004年は史上最高のエビ輸入量を記録しそうだ。

つまり、どっかの国民の安いエビを消費したいという意欲は、もはや、反ダンピング課税などでは収まらない状況になっていたのだ。

結局、どっかの国は反ダンピング課税によっても国内エビ産業を守ることができず、しまいにはエメリルさんキャンペーンなんてものまで展開し始めたわけである。

でも、そのキャンペーンもそんなにうまくいくのだろうか。このままでは、輸出国の価格が不当と言われ続け、日本にもあまりうれしくない状況が続いてしまう。どっかの国民の安いエビの消費意欲を減退させるには、どうすればよいのだろうか?(愚問)